明治・大正・昭和初期に設定された抵当権が現在でも抹消されずに残っている場合があります。その名も「休眠担保権」といいます。
この休眠担保権について、どのようにすれば抹消することができるかを解説いたします。
休眠担保権とは?
お金を貸した人は、とりっぱぐれを防ぐため、お金を借りた人の土地や建物に抵当権(お金を借りる際に土地や建物に設定する権利で、お金を返済できなくなった場合に抵当権が設定されている土地や建物を競売できる)を設定します。
身近なところで言うと、住宅ローンです。住宅ローンを借りるときに、購入する土地や建物に金融機関が設定していると思います。
お金を貸して抵当権を付けた人を抵当権者と呼び、お金を借りて抵当権を設定される人を設定者と呼びます。
休眠担保権は、お金を貸して抵当権を付けた抵当権者が、所在不明になり、抵当権を抹消することができない抵当権のことです。
どうして抹消ができないのか?
抵当権を抹消する場合、抵当権が設定されている不動産の所有者と抵当権者の共同で手続きを行う必要があります。そのため、抵当権者が所在不明になると共同で手続きができず、抵当権を抹消できなくなります。
では、抵当権者が所在不明になるとは、どのような場合なのでしょうか?
それは「抵当権者の現在の所在も、死亡の有無もわからない」ことを言います。
抵当権が設定されている不動産の登記簿をみると、抵当権者の氏名と住所が記載されいます。つまり、どこの誰が抵当権を設定したかを確認することができるのです。
ではなぜ、抵当権者の現在の所在も死亡の有無も不明なのかというと、何十年も前に設定された抵当権だからです。
抵当権が設定された当時の抵当権者はすでに亡くなり、相続が発生しています。もし、会社が抵当権を設定していたら、会社が倒産してなくなっているかもしれません。
休眠担保権を抹消する方法は?
休眠担保権が設定されている不動産の所有者が休眠担保権を抹消する場合、その方法は大きく分けて、三つあります。
- 抵当権者の相続人を探し、その相続人と共同で抹消する。
- 抵当権抹消の裁判をし、その裁判に勝訴して、所有者が単独で抹消する。
- 不動産登記法の休眠担保権に関する特例を利用して、所有者が単独で抹消する。
それぞれのメリット・デメリットは?
➊➋❸の方法はそれぞれメリットとデメリットがあります。詳細な手続き等の説明は、本一冊かけるくらいの量になりますで、今回は割愛します。
①共同で抹消する場合
共同で抹消する場合、費用が安くすみます。
しかし、抵当権者の相続人が多岐にわたり、10人以上いる場合もあるため、その相続人お一人お一人に事情を説明して、協力してもらうことはかなり困難な場合が多いです。さらに、抵当権者の相続人といっても、明治大正生まれのご先祖様のことを知らない相続人が大半ですから。
②裁判で抹消する場合
裁判で抹消する場合、勝訴さえすれば、所有者単独で抹消することができます。
ただ、裁判になるため、費用と時間がとてもかかります。少なくとも半年以上はかかることを覚悟する必要があります。費用も司法書士などの専門家に依頼する場合は、何十万もかかる可能性があります。弊所では15万円から承っております。
③特例で抹消する場合
特例で抹消する場合、裁判をする必要がないため、費用や時間を抑えられます。
しかし、一定の要件を満たす必要があるため、その要件を満たしているかの調査などが必要です。特例を利用できない場合もあります。
最後に
どの手続きが、利用できるかなどの詳細は司法書士にご相談ください。
明治大正昭和初期の抵当権がある場合は、要注意です!!