相続放棄について

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年間26万件ほど相続放棄の申立が受理されています。このコラムをお読みいただいている方も耳にしたことがある「相続放棄」について解説していきます。

相続放棄とは

相続放棄をすると、亡くなった方の相続人でなくなります。(民法第939条)
相続人でなくなるため、亡くなった方の財産を引き継ぐことは当然にできません。
現金・預貯金・不動産などの資産、借金などの負債も一切引き継ぐことはありません。

相続放棄のメリット

借金などの負債を引き継がない。

相続放棄のデメリット

現預金・不動産などの資産も引き継げない。

相続放棄をする前の注意点

①相続財産を処分しない

相続放棄をする相続人は、相続財産を処分した場合、相続放棄をすることができなくなります。

処分の例

処分とは、一般的経済価値がある相続財産の現状、性質を変える行為をいいます。

具体的には、次のような行為を行うことです。

  • 相続財産である老朽化した自宅などを取り壊す
  • 相続財産の現預金を使う
  • 相続財産の土地を売る
  • 相続財産の株式の議決権を行使する

②相続放棄は3か月以内にする

相続放棄ができる期間は決まっています。そのため、相続放棄をする相続人は、その期間内に必ず相続放棄をする必要があります。

相続放棄は、亡くなった方が生きているうちにはできませんので、ご注意ください。

相続放棄の流れ

相続放棄の流れは、死亡を知った日の翌日からスタートします。そこから三か月以内に家庭裁判所に申述(申立)を行う必要があります。この三か月以内の期間に受理決定まで得る必要はありませんのでご注意ください。

①被相続人の死亡

相続放棄手続きのスタートは、被相続人(亡くなった方)が亡くなったことを知った日の翌日(初日不算入)からです。亡くなったその日に知った場合、次の日から。亡くなった方と疎遠になっていて、1か月後に亡くなったことを知った場合、知った日の翌日からとなります。

②家庭裁判所への相続放棄の申述

家庭裁判所への相続放棄の申述は、亡くなったことを知った日の翌日から三か月以内にする必要があります。この三か月の期間は、一部の例外を除いて伸長されることはありませんのでご注意ください。

一部の例外

相続財産の構成の複雑性、所在地、相続人の海外や遠隔地所在などの状況のみならず、相続財産の積極、消極財産の存在、限定承認をするについての共同相続人全員の協議期間並びに財産目録の調整期間などを考慮

大阪高決昭和50・6・25家月28巻8号49頁

亡くなった方の住所地にある家庭裁判所に下記の申述書を提出します。申述は、相続放棄をする方、お一人からすることができます。全員で共同してする必要はありません。
申述書は、相続放棄をする方お一人につき、1通の申述書の提出が必要になります。つまり、相続放棄をする方が、三人いらっしゃる場合、3通必要になります。

申述書への記載事項

  • 申述人の氏名、住所、生年月日、連絡先、本籍地、職業、亡くなった方との関係
  • 亡くなった方の氏名、住所、死亡日、本籍、職業
  • 申述の趣旨
  • 申述の実情
    • 相続開始を知った日
    • 放棄の理由
    • 相続財産の概略(資産と負債)

申述に必要書類

申述書以外に、必要な書類は、次のような書類になります。❸について、相続放棄をする方により、必要になる戸籍の種類が変わります。

  • 亡くなった方の住民票又は附票
  • 相続放棄する相続人の戸籍
  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍

申述費用

相続放棄をする方1人につきかかる費用は

  • 800円(印紙)
  • 家庭裁判所からの書類郵送用で郵便切手262円(84円×3枚、10円×1枚)

③家庭裁判所の審理

申述書や必要書類を確認し、放棄の審理をします。相続放棄をする相続人は、家庭裁判所へ出頭する必要はありません。
その後、相続放棄をする相続人に対して、放棄意思の最終確認のため、書類(回答書)が郵送されます。その書類に必要事項を記載して、家庭裁判所へ返送します。

④家庭裁判所による申述受理決定

③の書類(回答書)を家庭裁判所に返送後、約10日ほどで、相続放棄申述受理通知書が相続放棄をした相続人に郵送されます。これにより、放棄手続きが完了します。

相続放棄をした後の注意点

①現状維持をする義務

相続放棄をした時、相続財産を占有している場合、その相続財産を他の相続人などに引き渡すまでその相続財産が紛失や損壊などしないように現状を維持する義務を負います。ただし、相続財産まったく関与していない場合、上記の義務を負うことはありませんので安心してください。

例えば、山林を相続した場合、相続人がその山林の管理をしていたとき、相続放棄をしても、山林を他の相続人に引き渡すまでは、山林の管理をする必要があります。

②相続放棄後の処分&相続財産を隠す

相続放棄をした後に相続財産を処分したり、相続財産を隠していた場合、相続放棄が認められなくなりますので、ご注意ください。

相続放棄件数

全国の家庭裁判所に相続放棄が申述され、受理される件数は約26万件ほどあります。件数は、年々増加傾向にあります。年間の死亡者数は157万人(令和4年度)だということを考えると相続放棄自体は珍しいことではないと言えます。

令和4年司法統計年報概要版(家事編)より抜粋

相続の放棄の申述の受理件数(全国)

最後に

今後ますます相続放棄件数は増えていくと予想されます。身近になりつつある相続放棄のことをこの機会に知ってみるのはどうでしょうか?
相続放棄について、何かご不明な点があればみずたに司法書士事務所にご相談ください。
相続放棄についての裁判所のホームページもぜひご活用ください↓↓↓