中小企業の多くは、一人株主が一般的だと思います。しかし、株主が2人以上いる中小企業も多く存在しています。今回は「株主が2人以上いる中小企業が注意すべき議決権」について、解説していきます。
議決権の正体
会社の所有者、その名は「株主」
会社の基本方針を決めているのは、経営者(取締役)であり、社長です。では、その経営者である社長は、誰からその権限を託されているのでしょうか?
答えは「株主」です。
株主には次の二つの権利が法律で与えられています。(会社法第105条)
- 自ら経済的利益を受ける自益権(配当を請求できる権利)
- 会社運営に参加する共益権(株主総会で議決権を行使できる権利)
この➊➋の権利を持つことで、株主は会社の所有者と言われています。
経営者(取締役)は、株主総会で株主により選任されます。株主以外の人は、経営者(取締役)を選任する権限を持ちません。会社にお金を貸している銀行、大口の取引先、ベテラン従業員などこれらすべての人は会社に大きな影響力があるかもしれませんが、法律上、なんの権限もないのです。
株主の権利
株主が持つ権利は、自益権と共益権があります。では、それぞれの権利の内容と権利を行使するのにどのくらい株式を所有している必要があるかを見ていきます。
自益権の場合
自益権は、自ら経済的利益を受ける権利です。自益権には、次のような権利があります。
自益権 | 必要株数 | 権利の内容 |
---|---|---|
配当請求権 | 1株以上 | 株式の数に応じて配当がもらえる。 |
残余財産請求権 | 1株以上 | 会社を閉鎖する時、株式の数に応じて余った会社財産がもらえる。 |
自益権の場合、1株以上の株式を所有しているだけで権利を行使することができます。
共益権の場合
共益権は、会社運営に参加する権利です。共益権には、次のような権利があります。
共益権 | 必要株数 | 権利の内容 |
---|---|---|
株主総会での賛否 | 1株以上 | 株主総会に出席し、各議題に対して「賛成」「反対」を表明できる。 |
共益権も1株以上あれば行使できますが、株主総会で議題を可決させるには一定以上の株数が必要になります。この共益権によって、議題を可決させることこそが会社を運営させるのに一番重要な権利になります。この権利を「議決権」とも呼びます。
会社を運営させるのに特に重要なものが下記の二つになります。この二つを自由に可決させられないと会社運営に支障をきたす可能性があります。
可決内容 | 可決に必要な条件 |
---|---|
取締役 選任 | 議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の過半数の賛成が必要。 つまり、議決権の51%以上を所有している必要があります。 例)100株(Aさん60株、Bさん20株、Cさん20株を所有)の会社で、 株主総会に出席したのがBさん20株、Cさん20株しか出席しなかった場合 →✖議決権の過半数の出席がないため。 |
定款 変更 | 議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の3分の2以上の賛成が必要。 つまり、議決権の67%以上を所有している必要があります。 例)100株(Aさん60株、Bさん20株、Cさん20株を所有)の会社で、 株主総会に全員出席したが、議題に賛成したのがBさん20株、Cさん20株の場合 →✖議決権の3分の2以上の賛成がないため。 |
議決権の51%以上持って!というのはこのためです。
司法書士的には議決権の67%(3分の2以上)を一人の株主が持つことをおススメします!!
そうすれば、会社運営に重要な議題を単独で可決できます。
うち、二人株主で50%づつ持ってますよ…
ああ、それは「デッドロック」ですね…。
一番最悪な持株比率です。二人の関係が悪くなると会社の運営が困難になります(汗)
持株比率は会社を運営していくなかで一番重要なことなんです!
う、うぅ、やっちまった…
議決権は会社運営の生命線
議決権を多くもつ株主は会社の運営に大きな影響力を持ちます。逆に議決権が少ない株主は影響力は小さいです。
株主が2人以上いる中小企業が注意すべき議決権のポイントは
社長ができるだけ多くの議決権を持つことだと言えます。具体的には議決権の67%以上を持つことです。当たり前のように感じるかもしれませんが、実は多くの中小企業で家族や親族に議決権を持たせていることがあります。株主は会社の所有者であり、議決権の分散は、会社運営のリスクにもなるのです。
最後に
謎の人のような状態にならないように、議決権について十分に検討が必要です。
せっかく、事業がうまくいっても内部崩壊しては元も子もありません。持株比率について、詳しく知りたい方は、みずたに司法書士事務所にお気軽にご相談ください。