相続人の相続権がはく奪される場合が法律に規定されています。「相続人の欠格事由」「推定相続人の廃除」です。今回は相続権のはく奪について解説していきます。
相続権がはく奪される場合とは
相続人であっても必ず相続権が保障されているわけではありません。民法では、相続人の欠格事由と推定相続人の廃除という制度を定めています。
相続人の欠格事由
相続人として「あるまじき行為」をした場合、なんの手続きもせずに相続権をはく奪する制度です。
具体的には、以下のような行為が「あるまじき行為」にあたります。
- 被相続人または相続人を殺害または殺害未遂により有罪になった場合
- 被相続人が殺害されたことを知って、告発しなかった場合
- 詐欺や脅迫により、被相続人に遺言書の作成や変更などをさせないようにした場合
- 詐欺や脅迫により、被相続人に遺言書の作成や変更などをさせた場合
- 被相続人の遺言書を偽造、変更、破棄、隠すなどをした場合
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実務上、一番多いのは「5」だと思いますね。
5を回避するためにも法務局での遺言書の保管制度を利用するのもいいと思います。
推定相続人の廃除
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した時に相続人となる予定の者)が被相続人に虐待や重大な侮辱をした場合や推定相続人が非行を行った場合、家庭裁判所に請求することで相続権をはく奪する制度です。
遺留分を有する推定相続人とは、以下のような方たちです。
被相続人に対する虐待や重大な侮辱とは
法律の難しいところですが、どこまでの虐待や重大な侮辱が廃除に該当するかはハッキリしません。
虐待や重大な侮辱の一般的な定義を参考まで記載いたします。
虐待とは、被相続人に対して、暴力や耐え難い精神的な苦痛を与えること。
重大な侮辱とは、被相続人の名誉や感情を著しく害すること。
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相続権をはく奪されることとのバランスを考えると、単純に1回殴ったや悪口を言ったなどは虐待や重大な侮辱にはならない可能性が高いです。
推定相続人の非行とは
虐待や重大な侮辱と同様、どのような行為が非行に該当するかはハッキリしません。
非行に該当する例を参考までに記載いたします。
犯罪、服役、遺棄、被相続人の財産の浪費・無断処分、不貞行為、素行不良、長期の音信不通、行方不明など。
「家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務」より
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「何年も子どもと連絡を取り合ってないので、どこにいるかわからない」はたまに耳にします。もしかすると推定相続人の非行に該当するかもしれません。
推定相続人の廃除件数
全国の家庭裁判所に推定相続人の廃除等が請求され、受理される件数は約200件ほどあります。年間約26万件ある相続放棄と比べると、非常にすくないと言えます。
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推定相続人の廃除等の審判事件数(全国)
最後に
欠格事由や廃除されると相続人ではなくなります。つまり、遺留分も失うことになるのです。相続には色々な制度があります。ご自身で悩まず、お近くの司法書士に相談してみるのもいいかもしれません。欠格事由や廃除について、知りたい方は、みずたに司法書士事務所までご相談ください。