相続が発生した場合、皆さんは、相続財産があるかを調べると思いますが、債務についても調べていますか?相続人は、亡くなった方の資産と負債の全てを相続します。その時、債務についても調べていますか?今回は、相続が発生した場合の債務の調査について、解説していきます。
そもそも債務は相続の対象になるのか
民法第896条に次のような定めがあります。「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」
つまり、被相続人(亡くなった方)の資産、負債もすべて相続人が引き継ぐということが書かれています。そのため、負債の方が多い方もいるため、相続放棄という制度があるわけです。
相続人に債務を調査する権限があるのか
これについても法律の定めがあります。民法第915条第2項に「相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。」としています。
つまり、相続人は、相続人としての権利として、相続財産の調査権があるわけです。よって、相続人に債務を調査する権限があります。
債務の調査方法
では、実際に債務を調査する場合、どのようにしたらよいのでしょうか。一般的な方法として、信用情報機関に開示請求をすることがあげられます。
信用情報機関とは、個人や企業の信用に関する情報を収集・管理・提供する機関のことです。これらの機関は、金融機関やクレジットカード会社、消費者金融などの依頼を受けて、顧客の信用情報を提供します。
主な信用情報機関の役割
- 信用情報の収集: クレジットカードの利用履歴、ローンの返済状況、借入残高などの信用取引に関する情報を収集します。
- 信用情報の管理: 収集した情報を安全に保管し、必要に応じて更新します。
- 信用情報の提供: 金融機関やその他の企業が、顧客の信用力を評価する際に、信用情報機関が保持する情報を利用します。これにより、融資やクレジットカードの発行などの審査が行われます。
主要な信用情報機関
- CIC (株式会社シー・アイ・シー): 主にクレジットカードや消費者金融の情報を取り扱っています。
- JICC (株式会社日本信用情報機構): 主に消費者金融や信販会社の情報を取り扱っています。
- 全国銀行協会 (全国銀行個人信用情報センター): 銀行系の信用情報を取り扱っています。
これらの機関は、個人の信用情報の適切な管理と利用を通じて、健全な信用取引の促進に貢献しています。
信用情報機関への開示請求の手続き
- 開示請求方法: 信用情報機関に対して、郵送などを通じて開示請求ができます。機関によって手続きの方法は異なるため、事前に確認が必要です。
- 必要な書類: 開示請求には、亡くなった方との関係を証明する書類、開示請求者の本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)、申請書などが必要です。
- 開示費用: 開示請求には手数料がかかります。
- 開示内容: 請求後、亡くなった方の信用情報が記載された報告書が提供されます。この報告書には、ローンやクレジットカードの契約内容、返済履歴、債務の残高などが含まれています。
信用情報機関での開示請求一覧
信用情報機関 | 開示方法 | 費用 | 期間 |
---|---|---|---|
CIC (株式会社シー・アイ・シー) | 郵送での開示 | 1,500円程度 | 10日から20日 |
JICC (株式会社日本信用情報機構) | 〃 | 1,300円程度 | 7日から10日 |
全国銀行協会 (全国銀行個人信用情報センター) | 〃 | 1,700円程度 | 〃 |
開示請求後の対応
- 開示請求後、債務があることがわかった場合、相続人へ共有しましょう。債務額によっては、相続放棄を検討する必要があります。
- 債務額が相続する資産より少ない場合、だれがその債務を相続するかも話し合いをしましょう。債務を相続する方が、その分、多くの資産が貰えるように調整をすることが大切です。
※信用情報機関への開示請求で調査できる債務は、あくまで、信用情報機関に登録されている債務のみになります。すべての債務を調査できるわけではないことにご注意ください。
例えば、亡くなった方が、個人からお金を借りていた場合は、信用情報機関で調査することはできません。
最後に
亡くなった方に債務があると知らずに相続し、「やっぱり相続やめます」とは言えません。「債務なんてないから大丈夫」とよく聞きますが、本当に大丈夫かどうかは、調査をしてから判断したほうがいいです。弊所では、相続による名義変更のサービスの一つとして、債務調査も行っています。ぜひ、ご相談ください。