相続等により取得した土地の国庫帰属について

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相続や遺贈により取得した土地を手放したいが、売却するのが難しい土地で、管理するのも大変だという社会のニーズを反映した「相続土地国庫帰属法」が施行されました。今回は「相続土地国庫帰属法」について、解説していきます。

相続土地国庫帰属法とはどんな法律なのか

「相続土地国庫帰属法」は、正式名称「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」と言います。

概要について

相続や遺贈によって、土地の所有権又は共有持分を取得した相続人は、法務大臣(法務局)に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについて、承認を申請することができる制度になります。

この国庫帰属制度の大まかな流れは、次のようになります。

  • 相続や遺贈で土地を取得する
  • 国庫帰属の要件を満たしている
  • 法務局に国庫帰属の申請をする
  • 法務局での審査&現地調査を行う
  • 承認後、申請者は負担金を納付する
  • 土地が国庫に帰属する

①相続や遺贈で土地を取得する

国庫帰属させたい土地を相続や遺贈で取得する必要があります。つまり、贈与や売買で取得した土地は対象外になりますので、ご注意ください。ただし、土地の一部を売買で取得し、残りを相続や遺贈で取得した場合、この制度を利用できます。

また、土地を複数人で相続し、共有になっている場合にも、この制度が利用できます。その場合、共有者全員で申請をする必要があります。

②国庫帰属の要件を満たしている

国庫帰属の申請ができない土地

  1. 建物がある土地
    • 建物は取り壊し済でも建物登記がある場合、滅失登記が必要です
  2. 担保権や使用収益権が設定されている土地
    • 抵当権や地上権、賃借権、地役権などの権利が設定されている土地
  3. 他人の利用が予定されている土地
    • 通路などに利用されている土地など
  4. 土壌汚染されている土地
  5. 境界が明らかでない土地や所有権の存否や範囲について争いがある土地

国庫帰属の申請はできるが、承認されない土地

  1. 崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5m以上もの)がある土地のうち、その崖を管理するにあたり過分の費用又は労力を要するもの
  2. 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
  1. 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
    • 産業廃棄物、古い水道管、浄化槽、井戸、大きな石など
  2. 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地
    • 他の土地に囲まれて公道に通じない土地
    • 池沼、河川、水路、海を通らなければ公道に出ることができない土地
    • 崖があって、土地と公道とに著しい高低差がある土地
    • 不法占拠者がいる土地
    • 隣地から生活排水等が定期的に流入し続けており土地の使用に支障がある土地
  3. 通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地
    • 土砂の崩壊の危険があり、崩壊を防ぐ工事をする必要がある土地
    • 大きな陥没があり、人の落下を防ぐ埋め立て工事をする必要がある土地
    • 大量の水が漏出し、排水ポンプを設置し、排水する必要がある土地
    • スズメバチやヒグマなどが生息し、人、農作物、樹木に被害が生じるおそれのある土地
    • 間伐の実施を確認することができない人工林がある土地

③法務局に国庫帰属の申請をする

この制度は、法務局に申請をすることになります。提出先になる法務局は、国庫帰属させたい土地の所在地を管轄する法務局になります。土地の所在地であっても、出張所や支局では扱っていません。
三重県の場合、津地方法務局本局(市役所の隣)でのみ申請が可能です。

津地方法務局:Google Mapのストリートビューより

申請書

申請は、法務局本局の国庫帰属申請窓口に申請書を提出します。郵送により行うこともできます。

添付書類

申請書の添付書類は、次の書類が必要になります。

(必須書面)

  • 承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
  • 承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
  • 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
  • 承認申請者の印鑑証明書(期限の制限はなし)

(遺贈によって土地を取得した相続人の必須書面)

  • 相続人が遺贈を受けたことを証する書面
    • 亡くなった方の相続人であることがわかる戸籍謄本
    • 亡くなった方の本籍地記載の附票又は本籍地記載の住民票の除票
    • 相続人の住民票又は附票

(承認申請者と所有権登記名義人が異なる場合の必須書面)

  • 土地の所有権登記名義人から相続があったことを証する書面
    • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本
    • 亡くなった方の本籍地記載の附票又は本籍地記載の住民票の除票
    • 相続人の戸籍謄本
    • 相続人の住民票又は附票
    • 遺産分割協議書(印鑑証明書付き)

(承認申請者と所有権登記名義人は同一だが、登記簿に記載されている氏名住所に変更がある場合の必須書面)

  • 氏名住所の変更があったことを証する書面
    • 氏名変更の場合は戸籍謄本、住所変更の場合は附票または前住所記載の住民票

(任意書面)

  • 固定資産税評価証明書
  • 承認申請土地の境界等に関する資料

審査手数料

審査手数料は、土地一筆あたり14,000円です。申請時に、申請書に審査手数料の額に相当する収入印紙を貼って納付します。

手数料の納付後は、申請を取り下げた場合や、審査の結果却下・不承認となった場合でも、手数料を返還できませんのでご注意ください。

④法務局での審査&現地調査を行う

③の申請書と添付書類を提出し、書面審査を行います。その後、必要と判断されると、現地調査が行われます。
審査の大まかな流れは、次のようになります。

⑤承認後、申請者は負担金を納付する

申請の承認後、負担金通知を受け、期限内(通知到達の日の翌日から30日以内)に負担金の納付をします。負担金は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した、10年分の土地管理費相当額です。
負担金の納付が必要になるのは、承認を受けた時の一度のみです。

負担金の基準となる土地の区分

申請があった土地は、「宅地」「農地」「森林」「その他」の4種類に区分され、この区分に応じて負担金が決定されます。どの区分になるかは、申請書や添付書類の書面審査、現地調査により判断されます。

負担金の基準になる面積

負担金の計算に用いる面積は、登記記録上の面積を基準とします。

負担金の算出方法

⑥土地が国庫に帰属する

⑤の負担金が納付された時点で、土地の所有権が国に移転します。

最後に

相続時に土地を手放す方法としては、次のような手続きもあります。どの手続きを利用するのが最適かを検討していただければと思います。
相続土地国庫帰属について、相談したい方は、みずたに司法書士事務所にお気軽にご相談ください。

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